『ZINJA SLAYER』

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▼作者名/サークル名:Room-ButterFly
▼発表形態:合同誌
▼判型:B6版366P
▼登場キャラクター:博麗霊夢
▼ジャンル:ニンジャスレイヤー

 

 思った以上にスレイヤー。
 
 ニンジャスレイヤーに関する説明は省かせていただく。忍殺は特徴的なセンテンスと文法を持っているので、一定のレベルまでは誰でも「それっぽく」模倣できる。それが同人SS書き、まして数年もののヘッズともなるとニンジャコンテクストが明瞭に形成されているので、描き出される『忍殺風東方二次創作』は忍殺として読んでも遜色ない域に達する。こういうとモーゼズ、ボンド両氏を軽視していたり、翻訳チームのオペレーションを無視しているように聞こえるかもしれないが、いずれにせよ想像以上に忍殺していたことだけは確かである。ワザマエ! (とってつけたような忍殺アッピル)
 
 ただ、メンバーが多いがために、一個一個のエピソードが短く、十分に忍殺しきれていなかったのではないかな、とも思う。本家ニンジャスレイヤーはどのエピソードひとつをとっても、人物造形、舞台設定、小道具に常に新しい設計を行っている(その手法は使い古されたものであっても)。こういうと自分でも何言ってんだか解んなくなるから簡単に言うと、忍殺はたとえ140文字でもそれと解らせるミームを常に備えているが、140文字では総体を成しえない。手や足だけ見ても「あ、ニンジャだ」って解るけど、頭や首や胴がなければ立ち歩くことができない。言ってしまえばあたりまえだなこれ。
 その点で、この忍殺合同誌は、果たして個々の作家がどれだけ腕や脚にとどまらず、全身を出すことができていただろうか。いや、どの方も、ニンジャソウルは、明確に出せていたとは思うが。
 ちなみに、一番気に入っているのは紅吏珠名氏の『ジンジャヘッズ・ウォントゥ・フォール・イン・チョメチョメ』だ。いちばんたくさんのページを割いてもらっているようであり、実際エンタメ枠筆頭の読みごたえ。設定の練り込みと風呂敷を広げてたたむまでの手際が流麗。他の作家さんたちが「前回までのあらすじ」や「つづく」を用いざるを得なかった中、しかと書き切ったのは強い。まことに強い(無論、その背景には忍殺自体がそうであるということと、紙幅の都合と、その他さまざまな要請があったのだろうことは想像に難くないが)。
 あと挿絵で白狼天狗の娘のパンツが拝めた。これが一番強い。
 
 そんなわけで、ジンジャスレイヤー。オススメでございます。