『処女膜の方向性の違いにより解散しました。』

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▼作者名/サークル名:蛮天屋
▼発表形態:同人誌
▼判型:B5版 100P
▼登場キャラクター:宇佐見蓮子 マエリベリー・ハーン
▼ジャンル:ホラーSF

 

 処女膜合同として有名な本。有名? 有名なのかな……いやでも処女膜合同なんて他に……ない……よな? 正直確信が持てない。けどまあ、有名な本だ。

 その実態は、蓮メリの貞操観念本といったほうが実態に即している。

 

 アン・シャーリー氏の蓮メリは過去の自身の過ちとを取り戻すべく奮闘する青春SF.

 蛮天丸氏の蓮メリは純潔とその壮絶な喪失が齎すカタルシスに狂ったルナボーンセックスロマン。

 生パン氏の蓮メリは、……あれは……。……あれは……なんだ……!?

 

 と三者三様に、汚れっちまった悲しみを描いている。

 とはいえ生きていく以上、誰だって純潔ではいられない。刻まれた傷すら人生だし、喪失はマイナスではなくプラスだ。いや、それっぽいことを言ってみただけなのだけど、実際そういう話ばかりである。失ったのは、失うのは、必ずしも処女膜や純潔ではない。互いが純潔である内は、秘封倶楽部であれただろう。モラトリアムの内は、と言い換えてもいいかもしれん。いずれにせよ、なんらかの変化を目指した時に秘封倶楽部の破局が起こる。純潔の喪失により秘封倶楽部が消えてなくなるのか、秘封倶楽部の終わりとして、純潔の喪失があるのかは不明だけど(不明って言ってるけどたぶん前者だろこれ)、ともかく蓮メリは、秘封倶楽部は解散するのだ。処女膜の方向性の違いのために。

 それは悲しい別離だ。だけど元来、死ぬのは他人ばかりだし、さよならだけが人生だ。秘封倶楽部というホモソーシャルペアレンツでさえ、結局は他人同士であるという、当たり前っちゃ当り前だけど意識するだに心苦しい事実がある以上、それは避けられない。水筒の水を大事にするように、思い出を糧に生きていくしかないのである。これらのストーリには、残念ながら別離以外に秘封の末路は存在していない。誠に。残念ながら。

 

 ちなみにホモソーシャルって現時点では男同士のつながりにしか適用できない言葉みたいだけど、意味的には女同士で使っても問題ないと思うのだが、どうか。レズソーシャルはちょっと……。

 

 ところで生パン先生の作品、あれ理解に苦しむような書き方を最初にしたけど、実際のところそんなにそんなに言うほど解らない、難解、不条理というものでもない。きちんと後々の方で説明を入れてきているので、粘り強くちゃんと読むのが大事だと思う。「自分にできること、自分にしかできないことをなんでもやろう」という意気込みがすごい。

 

 無論、おすすめです。まだ手に入るのではないかな。どうかな。