『二星』(東方外国文学合同「メーティスの雫」収録作品)

▼作者:近藤
▼発表形態:同人誌
▼ジャンル:漢詩
▼登場キャラクター:藤原妹紅 稗田阿求

 

 東方外国文学合同主催の近藤氏であるが、なんと漢詩。そもそも漢詩が読める事自体が相当の驚きである。漢詩は中高の漢文の授業で一応は習うけれど、書き方までは勉強しない。それを独学し、更には東方と絡めてしまうのだから、その探究心には脱帽するしかない。聞く所によると近藤氏の漢詩はちゃんと平仄が整っているらしい。らしいというのは浅学な僕は平仄が合っているのかどうかも分からないし、そもそも平仄ってなんだっけってレベルだからだ。確か、中国音でリズムを整わせるために使うことのできる漢字の制限だったと思うが、近藤氏はそれも辞典を使ってきちんとさせている。それもあって、本作は口に出して読んでみると実に耳に心地よい。詩の鑑賞の仕方というものはもちろん人それぞれなのだけれど、僕の場合は和歌でも英詩でも詩、ポエムに類する文章は音に出してはじめて、その美しさを理解できると思っている。世界文学合同を持っている人は是非、この漢詩を朗読してみてほしい。一応原理的には漢詩のリズムは中国音で出すときにその効力を発揮するのだが、日本語読みでも十分にその詩の持つ韻の流れを感じることが出来るだろう。
 さて、実際に内容であるが稗田阿求藤原妹紅の幸福な日々を詠ったものである。たぶんこの組み合わせは東方界隈ではそこまでメジャーではないと思う。ここにも近藤氏のこだわりが感じられる。二人ともある種の永遠を生きる者同士ではあるが、その形は全く違う。そんな二人の暮らしは聞く人にもの悲しげなデカダンスを感じさせる。また漢詩のキモである、美しい風景の描写も完璧だ。近藤氏はその読書量に恥じぬだけの語彙力をもっていて、風景や心情をぴたりと表現できる言葉を見事に使いこなしている。この漢詩を読んでから目をつぶってみると、その早朝の涼しさや、虫の鳴き声までが聞こえてきそうである。