『本居小鈴は識が怖い』

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▼作者名/サークル名:Escape Sanctuary
▼発表形態:同人誌
▼判型:文庫版122P
▼登場キャラクター:本居小鈴
▼ジャンル:ホラー

 

 これ、小鈴ちゃんが妖怪の出てくるエロ本読んでたらどーなったんだろうな?
 
 さてどうやらこいつは「怖い」シリーズのC85作品であったようで、実際これで3回目の「怖い」であったらしい、して先の、第11回例大祭にて4回目を数えたらしいことも、まずはここに書き添えておく。とはいえ、流れがつながっているわけではなく、いうなればこれはそのまんま各話完結の「幻想郷恐怖シリーズ」というもので(正確には『幻想少女恐怖シリーズ』)、まあ要するに、ホラーちっくなストーリーを楽しもうというものである。
 ホラーとかテラーとかダークな要素を入れ始めると、ゴロゴロッとエログロとリョナに転げてそっちを競いがちだけど、本書は鮮烈な描写を試みていない訳ではないにせよ、正真正銘『恐怖』で勝負を仕掛けてきているのは、これ天晴といっていいのでないかな。その甲斐あってかなくてかは知らないが、次の夏コミ……C86で第5弾を出す算段も付いている様で、なるほどホラーノベルが好きならば追っておいて損はない。
 内容を言えば、設定の作り込みや恐怖に説得力を与える『理詰めの抵抗』も確かに行っている。能力を制限された小鈴が限られた資源を用い、独力で事態の解決を図るうち泥沼にはまってゆく様などは、ホラー、恐怖の文法をよく解した筆運びであり、まったく16歳の少女が書いたものとは思えない手際だ。しゅごいぃぃいぃ。欲を言えばもう少し話のスケールが欲しいか。とはいえひとりの少女の抵抗と破滅を描くものである以上、スケールを求めても仕方がないのか……。
 そんなわけで、そろそろ夏ですしね。もうすぐ、そう、来週には夏至も過ぎますしね。夏の濃くて重い闇を横に置きながらホラーとか読むのも、悪くないんじゃないかな。オススメです。